贋作か真作かについて議論を白熱させている作品の一つが、レオナルドダヴィンチ作と言われる「美しき姫君」です。
この「美しき姫君」の絵画は1998年ニューヨークのあるオークションで一枚の絵画が出品され、絵画収集家であったピーターシルバーマンという人が落札しました。
しかしこの絵画は「本当にレオナルド・ダヴィンチの作品なのか?」と、真作か贋作か今も話題になっている絵画なのです。
というのもレオナルドダヴィンチのように有名な画家になると、名前を借りて大儲けしようとする贋作画家が現れるからです。贋作なのかどうか、美しき姫君の女性となったモデルが誰かについて見ていきたいと思います。
ダヴィンチの「美しき姫君」は贋作か?それとも真作なのか?
レオナルドダヴィンチの作品はこれまでにも贋作の可能性がある作品が見つかっていますが、美しき姫君に関しては利害関係のない専門家たちの間で真作と結論付けていました。
真作なのでその価値も高く、185億円もの値段が付いています。レオナルドダヴィンチは指で絵を描いており、分析からは同じ左利きの人の作品であることが分かっています。
しかし現代人ならば彼が左利きであることは知っているので、完璧な贋作を作ろうと左手を使った可能性もあります。
美しき姫君から採取できる指紋は、誰でも見られるような特徴で個人を特定することができません。様々な調査を行いましたが、贋作である証拠も真作である証拠も無かったので、結局レオナルドダヴィンチの作品として認めるしかありませんでした。
美しき姫君はスーパーのレジの女の子?
しかし2015年になって一人の男性が、美しき姫君は贋作だと主張し始めました。彼の名前はショーングリーンハルで、イギリスでは贋作画家として知られています。彼はその作品を1978年に描いたと言いました。
レオナルドダヴィンチはルネサンスの頃に活躍した画家なので、20世紀になって作られたものならば贋作であることは間違いありません。
ショーングリーンハルは贋作を作った罪で服役経験があり、イングランド北部のボルトンで働いていた時に描いたとしています。彼はスーパーマーケットに勤務しており、レジの女性をモデルにチョークとインクで描いたとも言うのです。
調査ではチョークは少なくとも250年前のものだと分かっていますが、彼は鉄分豊富な粘土質の土に、レオナルドダヴィンチが活躍した年代の有機素材を混ぜることで作れると反論しています。
そのモデルの女性はサリーとされますが、写真がないので真偽は不明です。
美しき姫君のモデルは誰なのか?
画像:ビアンカ・マリア・スフォルツァ
この「美しき姫君」のモデルとして有力な説は、ミラノの名家スフォルツァ家の一族の姫ではないかと言われています。
さらに個人を特定する材料として、
- 人物の髪の結い方の特徴があること
- 当時の最先端の衣装をまとっていることからスフォルツァの一族であると推測できること
- 大人になる一歩手前の女性であること
…と、該当者を順番に絞っていった結果、スフォルツァ家の当主の娘である「ビアンカ・スフォルツア」という人物であるとされているのです。
この人物は後にレオナルドダヴィンチの後援者となるミラノ公国軍人と結婚していますし、ダヴィンチとの関連性から考えても、絵画に描かれるような人物と考えても貴族・富裕層に限られてきます。
ビアンカは13歳にして結婚して妊娠したのですが、子宮外妊娠となりそのことが原因で夭逝。その死を悼んだ詩歌集が編纂され、この絵画もその死を悼んだ人物から依頼された物のようです。
当時は写真がなかったため、思い出となるように館に保管していたのだと考えられます。
結局「美しき姫君」は本物なのか?
「美しき姫君」の横顔の人物は確かに美しく横顔が描かれていて、モナリザとも似た繊細なタッチですね。
ただモデルとなった人物が本当は誰なのか、レオナルドダヴィンチが本当に書いているのか…それがわからないのです。
レオナルドダヴィンチの指紋が絵画から検出されたとはいいますが、その指紋も不明瞭な点があり贋作者もいることからこの肖像画の真相もわからないままです。
しかし本物となると1億6000万ドルとも言われています!
そのためこの作品を巡って訴訟まで発展することとなってしまいました。いずれにしても古いものの鑑定は難しくプロでも間違えることがあります。またモデルとなった人物の特定ともなるとやはり困難を極めるのでしょうね。