ダイヤモンドより硬いだろうとされている物質は今までもありましたが、シミュレーション上の結果のみや不純物を多く含むものであり、宝石のような輝きを持つものはありませんでした。
今回、アメリカの大学が開発した「Qカーボン」はダイヤモンド以上の硬度を持ち、宝石としての輝きもダイヤモンドより高いとのことです。
Qカーボンとはどういうものかを簡単な雑学を交えながら説明、結晶構造についても解説していこうと思います。
Qカーボンとは?
Qカーボンとは、炭素原子にレーザーを一瞬だけ当てて超高温まで熱した後、急速に冷やすことで作られる人工ダイヤの一種です。
自然界には存在しないQカーボン
Qカーボンは炭素原子にレーザーを当てて作るのですが、照射する時間は200ナノセカンド(500万分の1秒)という本当に一瞬です。また、その温度は約3700度という超高温にまで達しています。
天然ダイヤモンドが生成されるときの温度は1000度付近なため、Qカーボンはダイヤモンドと比べても圧倒的に高温なのです。
しかし、高温であればあるほど良いというわけではなく、地球上で作られるダイヤモンドは高温過ぎると黒鉛に変わってしまいます。さらに、一瞬で冷やされなければ結晶構造が変化して、これまた黒鉛になってしまいます。
Qカーボンについて「これまで地球上に存在したことはない」と研究チームが発表するのはそういった理由からではないでしょうか。
ダイヤモンドより硬く、輝きのあるQカーボン
今までも炭化チタンやウルツァイト窒化ホウ素など、ダイヤモンドより硬いとされている物質はいくつかあり、これらは業務用として様々なものに使われています。
しかし、Qカーボンはダイヤモンド以上の硬さだけでなく、強い輝きを持つのでいずれは宝石にもなるかもしれません。といっても、何億年もかけて作られた天然ダイヤモンドとは、宝石としての価値が圧倒的に違うと思いますが…。
ちなみに、宝石でよく言われる「硬度」とは、主に引っかき傷に対する抵抗性の強さである「モース硬度」のことを言い表していることが多いです。
つまり、硬いといっても衝撃に対する強さを表現しているわけではないので、鉄のハンマーで叩けば割れてしまうんですね。
もちろん、ダイヤモンドのモース硬度は最高数値の10です。
ダイヤモンドとQカーボンの結晶構造
ダイヤモンドとグラファイト(黒鉛)のように、同じ炭素でも結晶構造が違うと性質や見た目が大きく異なります。
ダイヤモンドの結晶構造は、最も対称性が高く結合の強い結晶系である「立方晶ダイヤ」という、理想的な角度で炭素原子が結合した状態です。
対してグラファイトは「六方晶構造」という原子同士の結合は強いものの、層間の結合が弱い結晶構造になっています。
この構造の違いによって同じ炭素でもダイヤモンドは通電しないのに、グラファイトは通電性があったりするのです。
今回開発されたQカーボンはダイヤモンドよりも硬い上、生成方法も熱してから急速に冷ますというダイヤモンドに似たものなので、ダイヤモンドと同じような結晶構造ということになるのでしょうね。
また、個体炭素としてはありえないとされている「磁力」を持つことや、「製造費用が比較的安く済む」というのもQカーボンの特徴であるとのことです。
まとめ
人工的ダイヤモンドは以前から作られており、ダイヤモンドカッターやダイヤモンドヤスリなどが工事現場でよく使われていますが、使われているダイヤはほぼ人工ダイヤです。
しかし、Qカーボンは今までの黒鉛やダイヤモンドとは全く異なる物質であり、医療現場などの様々な分野で応用が期待されています。
数年後には実用化されて、もっとカッコイイ名前がつくのでしょうか。これからどうなるのか楽しみですね。