『2分の1成人式』という成人式の2分の1の年齢で行われる記念行事があることをご存知でしょうか。
これは学校側が授業の一環として主催で行うもので、半成人式や十歳式と呼ばれることもあるそうです。1980年頃に考案されたイベントで、小学4年生を対象に現在は多くの小学校で取り入れられています。
では、『2分の1成人式』を行う理由や目的は何なのでしょうか?
2分の1成人式の狙い
2分の1成人式は学校の指導計画に載っており、目的を持って行っているものです。
式の狙いを簡単にまとめると、「今まで10年間生きてきた人生を振り返り、自分の成長を感じて前向きに生きていくための心情を育てる」「個人の役割の必要性を理解し、周囲への感謝の気持ちを持つ」ということです。
小学校4年制の指導計画がpdfで公開されていましたので一部ご紹介します。(以下は宮崎市教育センターによるもの)
- 成人式について調べる関心をもち、これまでの10年間を振り返り、自分なりの課題を設定することができる。(見つける力)
- 課題にそって資料を集めたり、まとめたりする活動のなかで、これまで生きてきた足跡を確かめることができ、今の自分がいろいろな人によって支えられていることに気付くことができる。(さぐる力)
- 成長した自分についてわかりやすく発表するとともに、自分を支えてくれている人々に感謝の気持ちをもち、自分の将来に希望をもつことができる。(広げる力)
- 自分の成長記録を作るにあたり、身近な人々へのインタビューを行ったり、集めた資料を選択したりし、わかりやすくまとめて発表することができる。(情報活用の実践力)
出典:4年・総合 年間指導計画 (※pdfファイル注意)
2分の1成人式には子の育ちや親の学び、地域の参画といった3つの意義があるとし、参加者の満足度は高いと言われています。
ベネッセが行った保護者へのアンケートによると、参加した親の9割もの人が式について「満足」と答え、さらに2分の1成人式前と後で子どもに変化があったそうです。
例えば、子どもが夢を語ることによって今までより頑張って練習に取り組んだり、親からの言葉を聞くことによってそれまでより素直に耳を傾けてくれるようになった…などの良い変化が見られたとのことでした。
内容に問題点がある?
2分の1成人式の内容やねらいを見ると、普通の授業の一部で特に問題点はないように見えますが、一体何が問題と言われているのでしょうか?
それは隠れた児童虐待の被害など一部の家庭に対する配慮がないということや、プライバシーがなくなるなど、式の内容自体が問題視されているようです。
2分の1成人式の主な内容とは
全ての学校が実施してはいませんが、『2分の1成人式』の代表的な内容には以下のものがあります。
- 親への感謝を込めた手紙の発表、親から手紙を貰う
- 自分の生い立ち、小さいころの写真を披露
- 将来の夢や就きたい職業をスピーチ
- 子ども自身の成長記録やアルバムを作る
これらの内容は「親は子どもへ愛情を尽くしているはず」「子どもは親に感謝しなければならない」という考え方にもとづいており、虐待など" 普通 "でない親の場合は周囲にそのことを隠さなければと子どもが思うようになります。
そして親への感謝の手紙についても、子供たちにとっては「お母さんありがとう」という親への感謝のセリフを強制されるというのが問題とされているわけですね。
他にも離婚歴や養子など、複雑な家庭環境を持っていることを「子どもの思い出」として公開されてしまうことにより、プライバシーが守られないということも問題点として挙げることが出来るのです。
まとめ
思春期の子供たちにとって、自分や家族のことを2分の1成人式で振り返ることはとても良い機会かもしれませんが、家庭の事情を配慮した内容にする必要があるという声があがっているということでした。
それにしても、10歳で「親に感謝」は少し早いような気もします。手紙も先生に言われたまま書くこともあるでしょうし、まだ反抗期にすら至っていない子もいるでしょうし、本当にまだ子どもの状態です。
式の内容的には子どものためよりも親のための行事に見えてしまいますね。これからも内容を工夫・改善していく必要性がありそうです。