人類は科学技術の発達によってさまざまな問題を解決してきましたが、その中でも実現ができておらず、また実現は不可能だろうとされているのが「不老不死」です。
現在だとこの老いず、死なずというテーマは実現が不可能なものとしてフィクションの題材程度にしかなっていませんが、歴史を見ると永遠の命を追い求めた人は数多く存在していました。
しかし現在の都市伝説の中では、この不老不死が医学によって実現されようとしているという話もあります。そのキーとなっているのが「テロメア」です。
不老不死の鍵は「テロメア」が握っている
テロメアとは生物の染色体の末端に存在している構造体であり、細胞の増殖と制御の役割を担う重要な存在です。これは都市伝説やオカルトではなく本当に存在する細胞です。
人を含むあらゆる生物は細胞分裂を繰り返すことで成長しているのですが、このテロメアは分裂をするたびに短くなって行き、一定の長さよりも短くなると細胞の老化が始まって、その末に天寿を全うすることになるのです。
ですが、もしこのテロメアの長さが短くならなければ、理論の上では細胞の老化が発生せず不老不死になることが出来ることになるでしょう。
不老不死の薬「テロメラーゼ」とは
これを実現する薬として開発されているのが「テロメラーゼ」という酵素です。もともとテロメラーゼという酵素は人間のDNAの中にもあるのですが、一部の細胞を除いてその機能は停止させられています。
このテロメラーゼの機能が停止していることによって生物としての人間は死に、DNAに刻まれた動物としての経験が次世代に生かされる「進化」を引き起こしています。
それはつまり、何らかの方法でテロメラーゼの機能を動かすことができればその生物は死なないことになるわけです。
そしてこのテロメラーゼの機能を復活させる研究が今まさに行われており、「実は不老不死の薬は既に実現されて、一部の富裕層はすでに不老不死になっている」という都市伝説があるのです。
テロメアとテロメラーゼ酵素の関係を発見したことについては、カリフォルニア大学の教授3名が2009年にノーベル医学生理学賞を受賞しています。都市伝説がただの嘘だったとしても、そう遠くない未来に不老不死の薬は完成してしまうでしょう。
不老不死は危険すぎるという見方も!
不老不死は不死身ではないため、老化以外の要因で死ぬ可能性はもちろんあります。
しかし、老いず死なずという人間のあり方が幸福だという考え方に対しては、果たしてその通りなのかという疑問の余地もあります。
例えば、もしすべての人が永遠に生きながらえるとすれば、人類は爆発的に増えて地球の資源を食い荒らし、生物の住めない荒廃した惑星にしてしまうかもしれません。
有限な資源を求めて争うこともあるでしょうし、自分の家族がそのために命を落とすこともあり得るでしょう。先に生まれたものが幸福になり、あとに生まれたものは苦難に満ちた世界で生きる…そういった未来を前提とした不老不死は、果たして本当に幸福なのでしょうか。
そして逆に一部の人だけが不老不死になる場合、すべての生物は生まれ変わって進化しているのに自分だけ取り残されるという状況になります。
永遠の命を実現できるかもしれないということは人類の科学技術の進歩の結果であるのは間違いありません。ただ命を操る研究を人が行うべきものなのか、不老不死の人間が行き着く先はどこなのか…慎重な判断が必要なことでしょう。